流通している米松合板の厚さについて説明します。
かつてJBLは、1950年代後期から60年代初頭にかけてパラゴン、メトロゴンの設計図を販売していました。
そこに記載のある殆ど合板・パーチクルボード等の厚さは、3/4インチ(19㍉)、1/2インチ(12.7㍉)です。
しかし、制作用に同じ厚さの合板を入手したいのですが、困難になっています。
実際には、殆どこの厚さのものは、販売されていないのです。
厚さが、1ミリも異なれば音質にも影響しますので、入手容易な合板を使用したくないのです。
アメリカの市場で、なぜ希望する厚さ(19㍉)の合板が少ないのか簡単に説明いたします。
更に複雑なことに、厚さの表示には、2種類あります。
NOMINAL (表記上の、額面の、名目の、名称上のという意味 以下ノミナルと表記する )と
ACTUAL(実際の、現実のという意味 以下アクチュアルと表記する)の二つです。
実際に、3/4インチ厚(19㍉)と店頭で表示があっても、23/32インチ(18㍉)であることが殆どです。
初めから23/32インチと表示している場合も多々あります。注意して合板を選ぶ必要があります。
なぜノミナルとアクチュアルの表示があるのかは以下です。
1 木材製品ですので、製造したときの厚さから店頭に並べ頃には収縮して薄くなるため、このような表示にしている。つまり製造したときは、19㍉厚でしたが、ユーザーが使用するときは、18㍉厚になっているということです。このようなことは実際に過去にあったと思いますが、乾燥材を使用している現在では、当初から18㍉厚で製造しているはずです。歴史上の慣行が現在も残っていると思います。
2 サンド掛けのために薄くなるから、ノミナルとアクチュアルの表示があるという説です。 つまり19㍉厚で製造したが、表裏面にサンド掛けしたために18㍉厚になるということです。
3 ほかにも、木材が原料なので、表面に多少の凹凸があり19㍉厚で製造しても1ミリ程度余裕を見て、最低保証値として18㍉で表示しているとの説もあります。
合板製造には、100年以上?の長い歴史があり、流通の便宜上ノミナルとアクチュアルの表示が業界で慣行になったようです。
参考までに、収縮のない材料で製造された、MDFやパーチクルボードは、単純明快でアクチュアル表示のみで19㍉厚等のものが
販売されています。
ところで、日本では、アクチュアル表示のみで一目瞭然ですね。
私が、オーデイオに興味を持った1970年代後期頃には、19㍉厚(アクチュアル)の米松合板が、日本でも流通していた覚えがあります。
しかし現在 では、アメリカでも18㍉厚(アクチュアル)が主流で、19㍉厚(アクチュアル)のものは、殆ど流通していません。
だから、アメリカのビンテージスピーカーを製作する場合は、材料調達で非常に苦労しています。
ABサンドとACサンドの厚さ(アクチュアル)が表示されていますが、このうち、3/4、1/2インチの合板の流通は非常に少ないので
ご注意下さい。