先日、あるお客様から次のご要望がありました。米松合板を使用したパラゴンレプリカについて、費用対効果も考慮する為に本当に音質がどうなるか知りたいということでした。
さらに、音の傾向を知りたいので、プレーンバッフルを制作して米松パラゴンの音の傾向を教えて欲しいとのことでした。
私も、米松合板で制作されたパラゴンを試聴したことはありません。
音質の違い等を自信を持ってお答えできないので、米松合板でプレーンバッフルを製作して試聴することは、今後のパラゴンレプリカの販売に 有益と思いました。
しかし、資金や時間に余裕があるわけではなく、プレーンバッフルの制作まで手が回らないのが実情です。
そこで、大昔のステレオサウンド誌で製作された米松合板製のプレーンバッフルの記事中で、その音の傾向を紹介していますので、その記事から抜粋してご紹介いたします。
ステレオサウンド誌 41号 マイ・ハンディクラフト 15”スピーカー用プレーンバッフルをつくる
〇この記事の概要
★桜合板によるプレーンバッフル
35㎜厚の桜合板を使用し120㎝X120㎝ のバッフル板に桜材の角材(40㎜X55㎜)を補強材として使用したもの。
この桜合板のプレーンバッフルでタンノイやアルテックを試聴したところ予想以上の響きの良さが感じられた。
そこでこの良い響きは、桜材によるものかまたは、プレーンバッフルの特質なのか見極めるために、JBL・アルテックなどのエンクロージャーでかつて使用されていた響きのよいことで定評のある米松合板を使用したプレーンバッフルを製作した。
★米松合板によるプレーンバッフル
32㎜厚の米松合板を使用し120㎝X120㎝ のバッフル板に桜材の角材(36㎜X72㎜)を補強材として使用したもの。
なお、合板の厚みですが、19㎜厚と12.7㎜厚の米松合板を接着したものを使用した。
SS誌の試聴室で プレーンバッフルに造詣が深い長島達夫氏と山中敬三氏 が試聴してその結果をコメントしている。
〇タンノイHPD385Aでの試聴結果
編集者:タンノイHPD385Aを米松合板にマウントした状態の音は如何でしたか。
長島:音像の定位や奥行感などは、桜材のプレーンバッフルと基本的に変わりはありません。
しかし響きがまるで変ってしまい、音がもっと明るく軽快になったと思います。
山中:音が単音になると言ったらおかしいですが、桜材のプレーンバッフルの場合は、音にハーモニクスがのってひとつの響きをつくりあげるという印象があったのです。
米松材のプレーンバッフルでは、スピーカーユニット自体の持つキャラクターがもっとストレートに出てくるように思います。
HPDになってからのタンノイは、コーン紙の質量がかなり重くなっているためか、コーンのファンダメンタル領域に独特な癖があるにですが、それがより強く出ていたようです。
長島:この前の桜材のプレーンバッフルで同じHPD385Aを聴いたときは、新品のタンノイとは思えないような滑らかな高域が出て驚いたのですが、米松材のプレーンバッフルでは、新品の状態のタンノイ本来の音がそのまま出てきたように思います。
山中:タンノイのオリジナルエンクロージャーは、桜材のプレーンバッフルと同じ様な響きを持たせているように思います。
音に共通性が感じられるのです。ところが、今度製作した米松材のプレーンバッフルで得られた音は、タンノイを使った既存のスピーカーシステムで言えば、ロックウッドのイメージに近いように思いました。
〇アルテック604-8Gでの試聴結果
編集者:アルテック604-8Gを米松合板にマウントした状態の音は如何でしたか。
山中:アルテックらしい明るい音色が十全に生かされていると思います。
バッフル板のサイズが120㎝X120㎝ですからファンダメンタルズはどうしても不足気味で、全体としては全体的にハイ上がりの傾向の音です。量感としては足りなくても出てくる低域のクォリティは素晴らしいものです。
長島:アルテックの持っている中域のエネルギー感が非常にストレートにスパットと出てきて、アルテックらしい強さが感じられます。
山中:バッフル自体が非常に強固でスピーカーユニットからのエネルギーに 強烈に反発して効果的に響いているのが実感できる音ですね。生き生きしていて伸びのあるいい音ですね。
〇その他、この記事中の編集者等の米松合板バッフルについてのコメント
米松合板製のプレーンバッフルは予想通りスピーカーユニットのキャラクターをより素直に出してくれたが、補強材の入れ方や設置の仕方に注意いなければならない。
この記事の内容から米松合板の音質は、明るく軽快な響きで、スピーカーユニットのキャラクターをストレートに表現する傾向のようです。
左が米松合板のプレーンバッフル、右が桜合板のプレーンバッフル
上が桜合板のプレーンバッフル、下が米松合板のプレーンバッフルです。補強材の使い方が違います。