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パラゴンには、米松合板、パーチクルボードほかに米松材のパーツが使用されています。
例えば、底板と側板を強固に接合するためにグルーブロックが使用されますが、 それが米松材です。
また、裏蓋は、木ネジで取付ていますが、開け閉めでネジの保持力が損なわれないように、ネジが刺さるところに米松材を使用しています。
使用されている米松材の多くが厚さ19ミリ(3/4インチ)です。
アメリカではないので19ミリ厚の製材品など入手できないので、工房で製材しています。
複数台のパラゴンレプリカを制作する場合に大量に米松材が必要になるので19ミリ厚に製材いたしました。
19ミリ厚の製材品がすべての基本でこの材料から、各パーツを簡単にカット出来るのです。
大量にありますが、歩留まりはおそらく60%くらいだと思います。
長さ順に並べたところです。
下記の新製品が入荷致しました。 近日中に販売開始いたします。 もしお急ぎの場合は、お問い合わせください。
毎日梅雨らしい湿った天気が続いています。毎日、19㎜厚の米松材を切り出して鉋掛け等行っています。
並行して米松合板の木取り図を作成中です。
パラゴンレプリカの複数台分のパーツを一度にカットするので重要な作業になります。
木取りというのは、合板のサイズ2440㎝X1220㎝内で無駄無く材料を使用するためにパーツカット用の配置図です。
これまでパーチクルボードでは、かなり自由に縦横関係なくパーツの切り出しが出来ました。
しかし、合板の場合は、木目があるので、縦横自由にカットすることは出来ないのです。
合板は、通常奇数枚の薄板を交互に交差して貼り合わせています。(偶数枚の薄い合板ですが稀にあります。)
従って表裏の木目の方向は、強度があるのです。
パーツを切り出す場合に、長辺方向に木目が流れるようにカットしなければいけないのです。これは、木工の鉄則です。
合板には、この特徴があるのでパーチクルボードよりも木取りが制約されて歩留まりが悪くなりがちで、木取りが重要なのです。
今回、輸入した19㎜厚の米松合板は、比重0.53です。パーチクルボードは、比重0.65です。
米松合板の方が18%くらい軽量ですが、曲げ強度は、比重に反比例して優れています。
表面硬度は、パーチクルボードの方が硬いです。米松合板は、外力に対して粘りがありますが、パーチクルボードは、表面は硬いが、脆いということになります。
木ネジの保持力も米松合板 の方が優れます。
米松合板でパラゴンレプリカを制作した場合、10~15㎏程軽くなると思われます。
このように米松合板は、パーチクルボードとは、全く違う特長の材料です。
米松合板を使用した場合、どのようなパラゴンレプリカになるか非常に楽しみです。
この「米松合板とは」のシリーズは今回で終わりとさせて頂きます。
現在使用しているJBL LE8-1のバスレフ箱です。12㎜の国産カラマツ合板を2枚貼り合わせて24㎜厚のボックスにしました。
42リットルの容積です。自家用ですので、つい鉄則に反して、側板を短辺方向に木目が流れるようにカットしてしまいました。
内部には、米松角材で補強を入れていますので、特に音質には影響しないと思います。
カラマツ合板は、構造用合板で建材グレードで、非常に安価です。 近くのホームセンターで、セレクトさせてもらったので
幸運にも節が表面にないものを入手出来ました。溝切して木ネジと接着剤で強固に組み立てています。
先日、あるお客様から次のご要望がありました。米松合板を使用したパラゴンレプリカについて、費用対効果も考慮する為に本当に音質がどうなるか知りたいということでした。
さらに、音の傾向を知りたいので、プレーンバッフルを制作して米松パラゴンの音の傾向を教えて欲しいとのことでした。
私も、米松合板で制作されたパラゴンを試聴したことはありません。
音質の違い等を自信を持ってお答えできないので、米松合板でプレーンバッフルを製作して試聴することは、今後のパラゴンレプリカの販売に 有益と思いました。
しかし、資金や時間に余裕があるわけではなく、プレーンバッフルの制作まで手が回らないのが実情です。
そこで、大昔のステレオサウンド誌で製作された米松合板製のプレーンバッフルの記事中で、その音の傾向を紹介していますので、その記事から抜粋してご紹介いたします。
ステレオサウンド誌 41号 マイ・ハンディクラフト 15”スピーカー用プレーンバッフルをつくる
〇この記事の概要
★桜合板によるプレーンバッフル
35㎜厚の桜合板を使用し120㎝X120㎝ のバッフル板に桜材の角材(40㎜X55㎜)を補強材として使用したもの。
この桜合板のプレーンバッフルでタンノイやアルテックを試聴したところ予想以上の響きの良さが感じられた。
そこでこの良い響きは、桜材によるものかまたは、プレーンバッフルの特質なのか見極めるために、JBL・アルテックなどのエンクロージャーでかつて使用されていた響きのよいことで定評のある米松合板を使用したプレーンバッフルを製作した。
★米松合板によるプレーンバッフル
32㎜厚の米松合板を使用し120㎝X120㎝ のバッフル板に桜材の角材(36㎜X72㎜)を補強材として使用したもの。
なお、合板の厚みですが、19㎜厚と12.7㎜厚の米松合板を接着したものを使用した。
SS誌の試聴室で プレーンバッフルに造詣が深い長島達夫氏と山中敬三氏 が試聴してその結果をコメントしている。
〇タンノイHPD385Aでの試聴結果
編集者:タンノイHPD385Aを米松合板にマウントした状態の音は如何でしたか。
長島:音像の定位や奥行感などは、桜材のプレーンバッフルと基本的に変わりはありません。
しかし響きがまるで変ってしまい、音がもっと明るく軽快になったと思います。
山中:音が単音になると言ったらおかしいですが、桜材のプレーンバッフルの場合は、音にハーモニクスがのってひとつの響きをつくりあげるという印象があったのです。
米松材のプレーンバッフルでは、スピーカーユニット自体の持つキャラクターがもっとストレートに出てくるように思います。
HPDになってからのタンノイは、コーン紙の質量がかなり重くなっているためか、コーンのファンダメンタル領域に独特な癖があるにですが、それがより強く出ていたようです。
長島:この前の桜材のプレーンバッフルで同じHPD385Aを聴いたときは、新品のタンノイとは思えないような滑らかな高域が出て驚いたのですが、米松材のプレーンバッフルでは、新品の状態のタンノイ本来の音がそのまま出てきたように思います。
山中:タンノイのオリジナルエンクロージャーは、桜材のプレーンバッフルと同じ様な響きを持たせているように思います。
音に共通性が感じられるのです。ところが、今度製作した米松材のプレーンバッフルで得られた音は、タンノイを使った既存のスピーカーシステムで言えば、ロックウッドのイメージに近いように思いました。
〇アルテック604-8Gでの試聴結果
編集者:アルテック604-8Gを米松合板にマウントした状態の音は如何でしたか。
山中:アルテックらしい明るい音色が十全に生かされていると思います。
バッフル板のサイズが120㎝X120㎝ですからファンダメンタルズはどうしても不足気味で、全体としては全体的にハイ上がりの傾向の音です。量感としては足りなくても出てくる低域のクォリティは素晴らしいものです。
長島:アルテックの持っている中域のエネルギー感が非常にストレートにスパットと出てきて、アルテックらしい強さが感じられます。
山中:バッフル自体が非常に強固でスピーカーユニットからのエネルギーに 強烈に反発して効果的に響いているのが実感できる音ですね。生き生きしていて伸びのあるいい音ですね。
〇その他、この記事中の編集者等の米松合板バッフルについてのコメント
米松合板製のプレーンバッフルは予想通りスピーカーユニットのキャラクターをより素直に出してくれたが、補強材の入れ方や設置の仕方に注意いなければならない。
この記事の内容から米松合板の音質は、明るく軽快な響きで、スピーカーユニットのキャラクターをストレートに表現する傾向のようです。
左が米松合板のプレーンバッフル、右が桜合板のプレーンバッフル
上が桜合板のプレーンバッフル、下が米松合板のプレーンバッフルです。補強材の使い方が違います。